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2021年4月23日(金)
遺言は必要?~高所得者ほどトラブルは少ない⁉
遺言は本当に必要でしょうか?
遺言というと一般の方にとっては「お金持ちの人が作成するものでしょう?」「うちには財産が無いから必要ない。」とお考えの方がきっと多い事でしょう。
しかしながら、遺す現金が少額であったとしても家族の相続争いが起こらないよう遺言書で具体的な相続分与の内容を記した作成をおすすめします。
●遺言とは
遺言の読み方はみなさんご存知でしょうか?
一般的になじみのある読み方は、「ゆいごん」ですが、法律用語では「いごん」という読み方が使われます。「いげん」という読み方もあるようですが、あまり一般的では無いようですね。
「遺言自由の原則」を認める事により、亡くなった後でも遺言書によって自分の財産の希望を書きのこすことができます。
ただし、遺言書の能力にも限界があるため、遺言書に書かれたすべてが望みどおりにならない事もあります。
また、書式や取り扱いを間違ったために効力が失われる可能性があるだけでなく、効力のある遺言書であっても死後に第三者による遺言書の取り扱いを誤ったことにより同様に効力が失われる事もあります。
●遺産分割で争続(争い)になりやすい資産額は?
はじめにお話しをした「遺言書」はお金持ちや資産のある人の限定と思う方は多いのではないでしょうか?
こちらのグラフは全国の家庭裁判所で起きた遺産の分割で争いがおき、裁判所に持ち込まれた「事件数」です。つまり遺産となってしまった土地、建物、現金などを分割するうえで紛争が起きて遺産分割の判断を裁判所に委ねられ解決した件数です。
・遺産の価格別紛争件数
こちらのグラフでまずわかる事は、資産の価額が高い案件ほど紛争が少ないことです。
価額別の紛争では、1,000万円以下は全体の32.1%、1,000万円~5,000万円以下では43.4%で、5,000万円以下とすると全体の75,5%。つまりほとんどの方が遺産の価額が5,000万円以下の方で遺産分割争いが起こっていることです。
これは、資産を多く持っている人ほど遺産の対処をしっかりと行っているという事です。
・遺産紛争の内訳
こちらの表では詳細は割愛していますが、遺産が1,000万円以下の場合は「現金」のみの分割争いが第一位ですが、1,000万円以上の遺産に関しては、「土地・建物・現金」を合わせた分割の紛争が第一位でした。
こちらからわかる事は、遺産が1,000万円以下の場合は、現金の分割でもめ事が起こり、5億円以上を含めた1,001万以上に関しては、「土地・建物・現金」を合わせた分割の紛争が主になる事がわかります。
●現金の分割と不動産の分割
遺産が現金のみでこれを分割するとなった際は、分割の割合さえしっかりと決まっていれば比較的容易です。一方、遺産の分割の対象が家や土地であった場合は、現金化をしない前提であれば分割しての相続は容易ではありません。不動産を含めた分割の紛争が多いのもこういった理由があるのかもしれません。
●争続にならない為にも遺言書を!
遺産分割で争いになりやすい価額で多いのは5,000万円以下であることは前述させていただきましたが、遺す現金が少額であったとしても、持ち家や自家用車など現金以外の資産をお持ちの方は遺産の価額として含まれますので注意が必要です。
また、不動産などを持っている方は家族への相続が争続にならないように遺言書で具体的な相続分与の内容を記した作成をおすすめします。
●遺言書の種類と作成
遺言書の内容が偏っていたり記載内容にモレなどの不備があったりした時などは遺言書があっても争いが起きてしまう可能性が高まるので資産の内訳を明確にして状態で記しましょう。
・遺言書の種類
遺言書を作成するにあたりいくつか遺言書の種類があるので紹介します。
【自筆証書遺言】は文字通り自筆が絶対条件のため、パソコンでプリント。というのはもちろんNGです。
一番費用がかからず手軽ではありますが、書式に不備があり効力が失われるという事が一番多いとされています。
【公正証書遺言】は、公証人が証書を作成します。書式の不備や作成後の改ざんに関しては安心できるでしょう。ただし作成後は、公証人役場にて保管されるので家族に伝えておかないと遺言書が無かったものとされる可能性があるので注意が必要です。
【秘密証書遺言】に関しては利用される方は少ないようです。これは遺言内容を一切公開せず2名以上の公証人に内容を証明してもらう方法です。遺言書は公証人役場で保管はせずに本人が保管するものです。
こちらも家族にも秘密にしていたため発見されなかったという事例が多くあるようです。
【法務局での保管】2020年7月に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が施行され、自筆の遺言が一通3,900円という低価格で、法務局に保管してもらうサービスです。
法務局での書式確認は行われないので、せっかく預けていても書式不備により無効になる可能性があります。
・遺言書作成時の注意点
「遺留分」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これは相続人が不公平にならないように民法で定められています。
遺留分が認められる相続人には配偶者・子ども・孫などの「直系卑属」。親、祖父母などの「直系尊属」などがあげられます。遺言書にこの対象の方が入っていなかったとしても、遺産をもらう権利はあるのです。
もし、遺言書上で偏った分与の記載があったとした場合でも遺留分が優先されるためこのあたりも紛争を避けるために理解したうえで作成する必要があります。
自筆で遺言書を作成する場合で、協力者なしで作成することは書式の不備で無効になる可能性が出てくるので、しっかりと勉強をしなければなりませんが、それでもリスクは高いといえます。
やはり士業や公証人に協力をしてもらう事をおすすめします。
士業では、弁護士、司法書士、行政書士が安心でおすすめですが、一般の方の場合は行政書士の費用が弁護士などに比べて安価にすみます。士業に依頼すると20~30万円が必要といわれています。
さらに費用を抑えるには、公証人役場にて「公正証書遺言」に相談してみるとよいでしょう。
こちらは1~2万円ほどといわれています。
●遺言書の取り扱い
自筆遺言書のように自宅で保管する場合は発見されないリスクをお話ししましたが、その他にも注意点があります。例えば家族の一人が遺言書を発見して取り扱いがわからず勝手に開封してしまったという事です。民法で「遺言書の検認」が定めてあり、罰金刑があり、開封は慎重にしなければなりません。
また、遺言書の偽造や処分も行ってはいけません。
このように遺言書作成はとっても大変な事のように思えてつい目をそらしたくなりますが、自分がいなくなった後の家族同士の争いは避けたいですよね。そのために遺言書の作成を検討してみることをおすすめします。
まとめ
・「遺言」の読み方は「ゆいごん」が一般的ですが、法律用語では「いごん」と呼ばれます。その他「いげん」という読み方もあります。
・遺産の分割で争いが起こり、家庭裁判所で容認・調停成立する件数は遺産分割価額1,000万円以下が32.1%、1,000~5,000万円以下は43.4%です。5億円を超えるわずか0.3%しかなく、決して庶民に関係のない話ではありません。
・遺言書を自分で作成して書式の不備で無効になる事も多く、士業や公証人役場にて作成することをおすすめします。
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